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護衛艦いずも体験航海記

みなさんは護衛艦というと、どんなイメージを持たれますか。

一般庶民には全く関係ない、おそらく一生触ることも乗ることもない船といった感じでしょうか。

でも自衛隊は、国民に広く自衛隊のことを理解してもらうために、自衛官のみなさんや装備品に触れる多くの機会を用意してくれているんです。

海上自衛隊では、

  • 国際観艦式
  • 各基地のフェスティバル
  • 艦艇の一般公開
  • 音楽隊の演奏会

といったイベントが盛りだくさんです。

そんな中、今回海上自衛隊最大の護衛艦いずもで体験航海するチャンスをいただきました。その航海の様子や感想をレポートしていきたいと思います。

目次

1.体験航海に至る経緯

今年2022年の11月6日に国際観艦式が相模湾で行われます。前回2019年は台風19号の災害復旧対応により中止だったので、2015年以来実に7年ぶりの開催です。しかし今年はコロナ禍のため、残念ながら無観客での開催となってしまいました。

私は以前の勤め先の関係で、ここ10数年以内開催の観艦式には毎回ご招待いただいていました。今年の観艦式も楽しみにしていたのですが、無観客開催と知ってかなりがっかりしました。

そんな時、確か今年7月頃、こんなイベントがあるよ、とご招待いただいたのが今回の体験航海。いちもにもなく参加表明した次第です。

2.体験航海

今回の体験航海は、海上自衛隊横須賀基地から横浜港大さん橋までを約3時間かけて航海するイベントです。

当日は横須賀基地で、朝6時半から7時半までの間に乗艦受付、8時に出航ということで朝が早い!私と同じグループのメンバーは全員前日夜に横須賀入りしましたが、私は前日の仕事の都合もあり、当日4時に起き、頑張って7時前に横須賀基地に到着しました。

当日乗艦した見学者は約1,000人。みなさん自衛隊のイベントには慣れているようで、案内係の自衛官の方に導かれてスムーズに受付・乗艦していました。

私は過去2度いずもに乗艦したことがあるのですが、毎回乗艦して驚くのは格納甲板の広さです。以前乗艦したことのある米海軍の原子力空母カールビンソンにはかないませんが、それでもやっぱり広々とした空間は、さすが「空母」(建前はあくまで護衛艦ですが)と言いたくなります。よく飛行甲板の広さの方が強調されますが、私は格納甲板の方が毎度印象深い。

乗ってすぐのところに、哨戒ヘリコプターSH-60K1機が格納されていました。

格納甲板に乗艦したところで、必要な人は荷物を預け、艦前部にある航空機昇降用のエレベーターに乗って飛行甲板に移動します。

私の見たところ、1回の昇降に見学者が200人程度乗っていたでしょうか。重量35トンと言われるF35戦闘機を昇降させるのですから、その程度の人間は軽々と運べます。このエレベーターに乗っていると、飛行甲板下の内部構造が丸見えになるので、メカ好きの私にとってはたまらない瞬間です。

エレベーターが上昇するといよいよ飛行甲板。

全長248m、全幅38mなので、1,000人の乗客でも込み合った様子は見られません。7時ごろに乗艦してしまったので、8時の出港まで暇です。

海上自衛隊の乗艦イベントで一点気になるのが、座るスペースが設けられていないところ。老若男女いろんな人が乗るので、全員分ではないにしろ、パイプ椅子でいいのでいくつか座席を設けてもいいのではないかと思います。海上は多少なりとも揺れるので、知らず知らずに踏ん張って立っているために非常に足腰が疲れます。

午前8時出港。

観艦式とは違って、音楽隊の軍艦マーチに送られることなく、しずしずと岸壁を離れていきます。タグボートが前後の右舷左舷に付いて、ゆっくり器用にいずもを左旋回させて舳先を港口に向けていきます。

国際観艦式に参加する各国海軍の艦艇が停泊していました。

いずもは右手に米海軍基地を見ながら横須賀を出ると、だいたい6ノットから9ノットのゆっくりした速度で東京湾を北上します。アテンドの自衛官の方にお聞きしたところ、横須賀横浜間は通常3時間もかからないとのこと。ゆっくりクルーズを楽しんでいただくためにわざと速度を落としているのだそうです。実際ずっと走ってばかりではなく、時間調整のために海上で停止したりして本当にゆっくり走っています。

船が走り出すと、乗客の多くは舳先に行きたがるんですが、私はあくまで艫(とも:船の後部)派。後ろを見れば船の引く航跡が見えるし、横を見れば流れていく景色が見える一方、舳先で前を見ていてものっぺりした海が広がってるだけで、基本変化がないからです。

見学者の列が少し短くなったのを見計らって、艦橋見学です。途中ほとんど梯子のような階段(ラッタル)を3つ登ってたどり着くのが航海艦橋です。艦長を中心にスタッフがきびきびと動き回っています。

東京湾は非常に混雑している水路なので、航行する際には本当に気を遣うということ。確かに見ている間に右に左に次々と大小の船が現れ、通り過ぎていきます。常に相手の未来位置を予測し、ぶつからないように舵を操作していかなければなりません。こりゃ、見ているだけで気が休まらない。

早々に航海艦橋を後にし、洋上補給用のホースを見学して、艦橋右舷側から26m下の海をおっかなびっくり覗き込み、飛行甲板に帰ってきました。

艦橋から艦首方向の眺め
艦橋から艦尾方向の眺め

何度か時間調整の停止をします。停止といっても、何もしないと船は流されてしまうので、停止位置から動かないように微速で前進・後進を繰り返し、舵を切りながら調整します。こういうマニアな説明は実際に乗艦しないと聞けないことですね。

しばらく待って午前10時半過ぎには横浜ベイブリッジの下を通過します。見上げているとマスト先端がベイブリッジに当たりそうなのですが、実際には結構余裕があるらしく自衛官の皆さんは余裕の表情でした。

横浜ベイブリッジを通過したいずも

午前11時過ぎに横浜港大さん橋にゆっくり接岸します。大さん橋にいた人たちは突然のいずも来訪にびっくりした様子。さん橋の反対側には、客船のパシフィックビーナスが停泊していましたが、迫力ではいずもが圧倒的です。

接岸するときに舫(もやい)綱の先におもりをつけて、甲板から岸壁に投げるのですが、これを見るのが護衛艦に乗った時の恒例行事です。何度か細い綱を投げるたびに、細かった舫綱がどんどん太くなっていくという説明なんですが、海に突き出た飛行甲板の上からだとその様子が実際に見られません。説明だけでは納得できない謎なので、次回別のもっと甲板が低い護衛艦に乗った時に確認してきたいと思います。

いずもの舫綱。意外に細い。

接岸後は、乗艦時と同じようにまた前部エレベーターに乗って格納甲板に降り、そこで預けた荷物を引き取って退艦となります。

予定より50分程遅れた退艦となりましたが、晴天に恵まれてあっと言う間の体験航海でした。アテンドしていただいた自衛官の方にも大変よくしていただき、さらに自衛隊の理解も進み気持ちのいい時間を過ごすことができました。

今回、空母改装前の最後の乗艦となると思いますが、空母に改装後また乗艦できたらうれしいです。

それにしても、朝から飲まず食わずだったのでお腹が空きました。退艦後はちょっとだけ記念撮影をして一目散に中華街へ。

3.護衛艦いずもってどんな船?

護衛艦いずもは、いずも型護衛艦の1番艦として2015年3月に就役した全通甲板(艦橋以外の甲板部分が平面)をもつヘリコプター搭載護衛艦です。現在改装中の2番艦かがに続き、今後戦闘機の離発着を可能にするための改装が予定されており、いわゆる「航空母艦(空母)」に生まれ変わる予定です。

自衛隊は、他にも全通甲板をもつヘリコプター搭載護衛艦を保有していますが、いずれも戦闘機の離発着には小さすぎるために、いずも型が戦後初の空母となる予定です。しかし、日本が空母を保有することに対する、主に中国および韓国の反発を考慮し、空母改装後も表向きは従来通り護衛艦の呼称を用いる可能性が高いと思われます。

公表されている空母改装前のいずもの性能要目は以下の通りです。

  • 基準排水量:19,500t
  • 全長:   248m
  • 全幅:   38m
  • 高さ:   49m
  • 喫水:   7m
  • 機関:   ガスタービン×4基 112,000馬力
  • 速力:   30㏏(55km/h)

4.まとめ

  • 今年の国際観艦式は無観客開催のため、かわりに護衛艦いずもの体験航海に行ってきました。
  • 今回でいずもには3回目の乗艦でしたが、動くいずもに乗るのは初めて。
  • 当日は晴天に恵まれ、ずっと飛行甲板にいてもぽかぽかと暖かい絶好の航海日和、早起きして横須賀まで行った甲斐がありました。
  • いずもは近々空母に改装される予定です。
  • 空母改装完了後、ぜひまた見学に来てみたいです。

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